炭火焼きの魅力と必要な道具
ガスや電気のグリルと比べて、炭火には独特の利点があります。遠赤外線による均一な加熱と高温の輻射熱が表面を一気に焼き上げることで、外はカリッと中はジューシーに仕上がりやすいのが特徴です。さらに炭が燃えるときに出る煙が肉に染み込み、独特の香ばしさを加えてくれます。
家庭で炭火焼きに挑戦するときに用意しておきたい道具は以下のとおりです。
- 七輪(しちりん):珪藻土製のものが保温性が高くおすすめです。丸型と角型がありますが、串を並べやすいのは丸型の中サイズ(直径26〜28cm程度)です。
- 炭:備長炭(白炭)は火持ちがよく高温を維持しやすいですが、着火に時間がかかります。黒炭(切炭)は着火しやすくコスパもよいため、初心者にはまず黒炭がおすすめです。
- 火おこし器:炭火おこし専用の筒形の器具で、煙突効果を利用して効率よく炭に着火できます。着火剤と組み合わせると比較的短時間でおこせます。
- うちわ・扇子:火力調整と炭おこしの際の送風に使います。
- 鉄の棒または金属製の串置き台:竹串の柄(持ち手部分)が炭の直上に来ないように七輪の端に渡す棒。竹串の焦げ対策として必須のアイテムです。
- トング・炭ばさみ:炭の位置調整と追加のために使います。
場所の確保も重要で、ベランダや庭など通気のよい屋外で行いましょう。室内での炭火使用は一酸化炭素中毒の危険があるため厳禁です。
炭のおこし方と火力の見極め方
炭火焼きで最も重要な工程が炭のおこし方です。火力が安定しないと串の焼き上がりにムラが出るため、焼き始める前にしっかり炭をおこしておきましょう。
ステップ1:着火と炭おこし
火おこし器に炭を入れ、底のスペースに着火剤や丸めた新聞紙を置いて点火します。うちわで扇いで酸素を送り込みながら5〜10分ほど待つと、炭全体に火が回ります。着火剤を使う場合は煙が多く出ることがあるため、風向きに注意してください。火おこし器がない場合は七輪の中に炭を直接組んで着火しますが、安定して火が回るまで時間がかかる場合があります。
ステップ2:七輪への炭のセット
炭の表面が白くなり、炎が落ち着いてきたら焼き始めのサインです。炭全体が赤く光り、白い灰をまとい始めた状態が「おきた」といわれる理想的な状態です。このタイミングで炭をトングで七輪に移し、高さが均一になるよう並べます。炭が偏っていると焼きムラの原因になるため、丁寧に配置しましょう。
ステップ3:火力の見極め方
七輪の金網から5〜6cm上に手をかざして確認します。2〜3秒で熱さを強く感じるくらいが強火、5秒以上耐えられる場合は中火の目安です。焼き鳥の場合は「遠火の強火」が基本で、金網から少し離して焼くことで表面だけが焦げるのを防ぎます。
炭に勢いよく水をかけるのは危険です。水蒸気爆発が起きて炭が飛び散る場合があります。火を消したいときは七輪の通気口を閉じて自然に消火させるか、金属製のバケツに砂を入れてその中に炭を入れて消す方法が安全です。
焼き方の手順
ステップ1:素焼きで下地を作る
まずはタレをつけずに素焼きで焼き始めます。串を金網に並べて全体に火が通るまで2〜3分ほど、前後に転がしながら均一に焼色をつけます。この段階ではタレを使わず、表面をしっかりと固めておくことが後の工程に影響します。生のまま強くタレを塗ると、タレが染み込みすぎて焦げやすくなります。
串を置くときは、竹串の柄(持ち手側)が炭の直上に来ないよう七輪の端に鉄の棒を渡し、その上に柄を乗せるか専用の串置き台を使います。竹串が直接炎に当たり続けると焦げて折れる原因になるため、この工夫は焼きはじめから徹底してください。水に30分ほど浸した竹串を使うのも一定の効果がありますが、配置の工夫のほうが確実です。
ステップ2:タレを重ね塗りする
素焼きで表面が固まり薄く焼色がついてきたら、刷毛でタレを薄く塗ります。タレは一度に厚塗りせず、塗って焼いて香ばしくなったらまた薄く塗る、という工程を2〜3回繰り返します。これによってタレが層になり、深みのある味わいになります。
タレの焦げを防ぐために、タレを塗ったあとは七輪の縁に近い弱火ゾーンにいったん串を移し、タレを定着させてから中心部の強火ゾーンに戻す方法がうまくいきやすいです。砂糖や糖分が多いタレほど焦げやすいため、テンポよく動かしましょう。
ステップ3:仕上げで香ばしさを出す
最後の仕上げは強火で短時間焼き、表面をカリッとさせます。タレをもう一度薄く塗り、30秒〜1分で引き上げるのが目安です。焼きすぎると肉が固くなるため、表面に照りが出てきたら早めに網から外しましょう。食べる直前まで温かく保ちたい場合は、アルミホイルで軽く包むとよいでしょう。
火加減と焼き時間の目安
部位ごとに適切な火加減が異なります。以下を参考にしてください。数値はあくまで一般的な目安で、炭の状態や肉の大きさによって変わります。
| 部位 | 火加減の目安 | 合計焼き時間の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| もも肉 | 中火〜強火 | 6〜8分 | 脂が落ちやすく炎が上がりやすい |
| むね・ささみ | 中火 | 5〜6分 | 加熱しすぎるとパサつく |
| 皮 | 弱火〜中火 | 8〜12分 | 脂をじっくり出しながら焼く |
| 砂肝 | 中火〜強火 | 6〜8分 | 中心までしっかり火を通す |
| つくね | 中火 | 7〜9分 | 崩れやすいため優しく扱う |
| ねぎま | 中火〜強火 | 6〜8分 | ネギに先に焼色をつけるとよい |
炭火焼きは見た目より中心部への火の通り方が遅いことがあります。もも肉など厚みのある部位は、串を外して断面を確認するか、肉汁が透明であれば焼き上がりの目安になります。食中毒予防のため、鶏肉は中心部が十分に加熱されていることを確認してから食べましょう。
よくある失敗と対処法
初めて炭火焼きに挑戦するときによく起こるトラブルと対処法をまとめました。
- 竹串が焦げてしまう
- 七輪の縁に鉄の棒を渡し、串の柄の部分が直接炭の上に来ないように配置します。竹串を事前に水に30分ほど浸しておく方法もありますが、配置の工夫のほうが効果的です。
- 炎が上がって表面が焦げる
- 脂が落ちて炎が上がった場合は、串を一時的に七輪の端の弱いゾーンに避けます。うちわで扇いで火を大きくするのは逆効果ですので、炎が自然に収まるのを待つのが基本です。
- 炭の火力が落ちてくる
- うちわで軽く扇いで酸素を送り込むと火力が戻ります。長時間焼く場合は、あらかじめ予備の炭を火おこし器でおこしておき、適宜追加できるよう準備しておくとスムーズです。
- タレが焦げて苦くなる
- タレを一度に厚塗りすることと、糖分の多いタレを強火で長時間当てることが原因です。薄く塗ってからいったん弱火ゾーンで定着させる工程を繰り返すことで防げます。
- 外は焦げているのに中が生
- 火力が強すぎることが原因です。七輪の端の弱い部分に移して間接的に火を当てながら蒸らすようにすると、内部まで熱が通りやすくなります。
まとめ
炭火で焼き鳥を美味しく焼くポイントは次の3つです。
- 炭をしっかりおこしてから「遠火の強火」で焼く
- 竹串の柄を鉄の棒の上に乗せて焦げを防ぐ
- 素焼きをしてからタレを2〜3回薄く重ね塗りして仕上げる
道具の準備と炭のおこし方を覚えてしまえば、家庭でも本格的な炭火焼き鳥が楽しめます。慣れてきたら串打ちにもこだわると焼きムラが減り、さらに美味しく仕上がります。余った焼き鳥の保存や食べ直しについては焼き鳥の温め直し方の記事も参考にしてみてください。